「今頃、地獄の沼の淵を彷徨っているだろうよ・・・」とそうぼやいているのは黒いサングラスをかけ冷たい面差
しの羅島という男だ。
この男は、ついさっき、由美子という女性を自分が裏で経営しているレイプ屋に売り飛ばして来たばかりだった。
「あの女、俺を誰だと思っているんだ!ある界隈ではちょっとは名が知れた有名人だってのによ!」と怒鳴ると羅島は、目の前のテーブルの上からウィスキーの水割りの入ったグラスを乱暴に掴み取るとグイグイと一気に飲み干した。
あまり強引にグイグイとウィスキーを煽るものだから当然ながら口元から大量に零れ落ちて顎を伝って上着のシャツにもウィスキーが染み付いていった。
羅島という落ち目芸能人のこの男は、落ち目から脱出する為に上司や取引先上司に似ているタイプに言葉巧みに接近し―もちろん別の業界や一般人でも似ている人を見つけるとプロの工作員に頼んで接近を図らせていた―自分タイプを常に選ぶように心理誘導させ何とか自分の配下に置こうと企み続けていた。もちろん、その行動によって最終的には自分の大ファンにして今よりもっと大きな仕事を掴む為だった。しかし、そのやり方があまりに強引過ぎるところが善くないのだ。何もプロの工作員を年中びったり張り付けて威嚇斡旋や様々な嫌がらせ、どうしても思うとおりに行かず自分タイプをこっぴどく断るとレイプ屋に平気で売り飛ばしているというのはどうにも頂けないお話だ。
その被害者女性の人数も一桁では到底終わらず―ハッキリ言って過去に多くの女性が羅島の毒牙に掛かって闇に売り飛ばされていたのだ―由美子以外にもアヤメや優子や美紀、欄、正美など様々な名前の沢山の女性が地獄に陥れられていたのだ。
その上、性懲りもなく「ふん、どうせ俺がこんなに酷い事しているとは誰も分からないだろうよ!表向きは話のよく分かる優しい良い奴で通っているんだ!」と一人ニタつき、地獄の閻魔大王も真っ青の鬼畜の本性を剥き出しているのだ。